Sales Contract
「メールじゃ細かいことはあんまり話せなかったから、色々聞かせてね。
ご両親はどうしたの?」
「離婚してしばらく母と暮らしてたんですけど、突然僕を置いて消えちゃって。
今、音信不通なんです」
たぶん男ができたんだと思うんですけど。と付け足して彼は笑った。
全然こっちは笑えないわよ。
「あ…じゃあお父さんは?」
「まったく知りません。もともと知ってた父のケータイに電話しても番号変えられてるし。祖父母は両親とも亡くなってるし、兄弟もいるわけじゃないからほんとに頼る先がなくて」
困ってしまって、すぐに返事ができなかった。
「まあ、この前高校は卒業したし、働くことも出来るんですけど…生活費をちゃんと払えるほどの収入にはならないんで、家は売り払っちゃいました。状況が状況だし、代理人立てるのとか大変でしたよ。
しばらくはそのお金でネットカフェで生活してたんです。
でもさすがにこのままじゃまずいと思って、あそこに書き込んだら千絵さんが声をかけてくれた」
彼はまるで台本でもあったかのように、今までのことをぺらぺらと話してくれた。