【短】となり
「はい、これで終わりね」
と、怪我した箇所の手当が終わった。
消毒液がしみたのか、有沢の顔は少し強張っている。
保険医はチラッとこちらを見ると、ニッコリ微笑んだ。
「井上くんもたまにはやくにたつのね?」
と、嫌味を言われる始末。
俺はここの常連で、事あるごとに保健室に来ては寝ている。
基本はサボりだけど。
「先生、どういう意味っすか?」
うふふと笑いながら
「わたしは会議あるから出てくけどしばらくは休ませてていいわよ?
井上くんも心配だろうから一緒にいてあげてね」
と言いながら、保健室から出て行った。
保険医が出ていくと急に静かになった。
相変わらず有沢は喋らないし。
俺は俺で一安心してソファに座り込んだ。
真っ黒な黒髪。
長いまつげ。
透き通ったような白い肌。
いつもは横目で見る彼女が、今は真正面にいる。
なんだか不思議な感覚だ。