【短】となり


「有沢…大丈夫?」


静かに発した声は思いのほか保健室に響いた。

少し口が開くものの有沢はただ黙って頷くだけ。


「なんか飲み物とかいる?」


「……」


今度は首を横に振った。


やっぱり、俺なんかと話をしたくないのか?


チラッと時計に目をやると、6時前。

そろそろ図書室を閉めないと。


俺はゆっくりと立ち上がり、有沢に言った。



「図書室閉めてくるから待ってて?
有沢も駅の方いくだろ、送るから一緒に帰ろう」


その言葉に少しだけ顔をあげたが、何かを言うわけでもなく、また黙って頷くだけ。

顔が見えるかなって思ったけど、前髪で隠れたその顔は、やっぱり隠されたまま。


俺は一息吐いた。


なんだかもとがしいとはこうゆうことを言うのかもしれない。




「あ……」


扉に手をかけた瞬間、なにやら聞こえた。


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