黒猫の願い事




月日の流れるのは早い。
いつの間にか、僕は猫の生活にも慣れ、混乱してぐちゃぐちゃになった心も少しずつ落ち着いた。
まだすべてを受け入れられたわけじゃないけど、これが僕の運命なら仕方がない。
少しずつ、そんな風に考えられるようになっていた。

アレクは元々頭の良い猫だからか、人間の生活に必要なことをどんどん覚え、最近では畑仕事も手伝うようになり、母さんも以前のような悲しい顔をすることはなくなっていた。



そんなある日のこと……







「あれぇ…おかしいなぁ…?」

アレクはそんな事を言いながら、部屋の中をきょろきょろと見回す。



「ねぇ、マイケル……
僕のロザリオを見なかった?」




(ロザリオ……?
そういえば、あの時……そう、僕とマイケルが入れ替わったあの時に、マイケルはロザリオを首にかけていた。
きっと、あれのことだ。)



「困ったなぁ……どこでなくしたんだろう?」



アレクはとても困った顔をしている。



(なんで、今頃あのロザリオのことを……あっっ!)



僕は重要なことを思い出した。
そうだ……一年前、アレクは言っていた。
ハロウィンの日にだけ、かけた魔法を解くことが出来るって。



(そ、それじゃあ……やった!僕は、元の人間に戻れるんだ!)



考えてみれば、もうじきハロウィンじゃないか!
本当に月日の流れるのは早い……
そうか…やっと、やっと、僕は人間に戻れるんだ!!



だけど……身をかがめてベッドの下をのぞきこむアレクを見ていて、大変なことに僕は気付いた。



きっと、魔法を解くにはあのロザリオが必要なんだ!
……そうだ!
あの時も、アレクはロザリオを首にかけて、おかしな声をあげて……
あれが、きっと魔法の呪文(?)みたいなもんだったんだ!



え……それじゃあ、ロザリオがないってことは……


え……


え……


ええーーーーっっ!






< 13 / 17 >

この作品をシェア

pagetop