黒猫の願い事




「兄さん、こんなに遅くまで探してたのかい?
アレク、あんまり兄さんに心配かけるんじゃないぞ。」

ライアンがそう言って、僕の頭を指で小突いた。



「ふぎゃふぎゃぎゃ」



ど、どうなってるんだ。
うまく言葉が話せない!
しかも、ライアンに向かって伸ばした手が真っ黒だ。
それもふかふかした毛むくじゃらの……



それを見て僕はようやくすべてを理解した。
そうだ、この夢では僕はアレクになってるんだ。
ってことは、僕になってるのがアレク……
僕とアレクが入れ替わったって設定の夢なんだ!



「やっとみつかったのね。
寒かったでしょう。
ココアでも飲みなさい。
ライアンはミルクの方が良いわね?」

母さんがそう声をかけてくれて、僕は僕になったアレクに抱かれたまま食堂に向かった。



「今日のアレクはやけにおとなしいね。
普段はこんなに抱かれてることなんてないのに。」

「そりゃあ、歩く方が楽だからね。」

「え?……兄さんはまるでアレクの気持ちがわかるみたいだね。」

そりゃあ、そうだ。
そいつは僕の姿をしたアレクなんだから。



僕になってるアレクは椅子に腰掛け、僕を膝の上に載せて…僕は特に抵抗もせず、されるがままにされていた。



「はい、お待たせ。」

母さんがすぐにココアを持って来てくれた。
僕になったアレクはココアには目もくれず、ライアンがミルクを飲むのをじっと見つめて……



「僕もそれが良いな。」

「えっ?でも、兄さんはココアが好きだったじゃないか。」

「そっちが良い。」

「そう?じゃあ……」

ライアンは、自分のカップをアレクに渡した。
アレクは、それを受け取ると一気に飲んで……



「あ、あーーーー!」

「ふぎゃーー!」



アレクがミルクを噴き出して、さらにはカップをひっくり返して、それが僕にもかかって……
びっくりした僕は自分でも驚く程、高く飛びあがっていた。

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