17-甘い君たち-
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ガコンッ
自販機から出てきたばかりのお茶を手にしながら、ゆっくりと冷たいそれを額に押し当てる。
「……つめた」
気づけばもう9月も終わる頃。夏の終わりは確実にやってきている。
……私の誕生日まで、もうあと少し。
告白されてから、ずっと2人の事ばっかり考えてる。
私が答えを出したら、どちらかを、はたまたどちらともを、手離すことになるのかもしれない。
ぎゅ、と。お茶のペットボトルを握りしめる。
美香が、みんな知ってるって、言っていた。
でも、そんな訳ないよ。……そんな訳ない。だって私たち、ずっと仲の良い幼馴染だったんだよ。周りから見たって、そうだったハズだよ。
それとも、そう思ってたのは私だけだったってことなの?
「ちょっとー、どこ隠れてるのー?」
大きな声がして、びくりと体が飛び跳ねた。誰かを探しているような女の子たちの声と足音が、こっちまでやってきているみたいだ。
「もー、どこ行ったの?」
「全然つかまんないんだから……」
私の後ろを通り過ぎていく女の子たち。上履きの色からして、多分同級生。
長く伸ばした髪を綺麗に巻いて、女子高生らしく短いスカートを揺らして。可愛いなあ、ってそう思う。
私も、あんな風になれたら。
きっと、あの2人の隣にいたって、何にも言われなかったんだろうな。
そう思いながら一歩を踏み出そうとした時、通り過ぎて行ったはずの女の子たちがピタリと動きを止めてこちらを振り返った。
「……あのコ、南緒チャンじゃない?」
こそり、と。3人いるうちの1人が隣の子に耳打ちしたのがわかった。
ああ、またか。
また、あの2人には似合ってないよね、ってきっと、そう言われるんだ____。
教室に早く帰ろうともう一歩踏み出した時、強い力によって私は踏み出した方向とは逆に引っ張られた。
「っ、?!」
「南緒」
ぽすっ、と。後ろに倒れこんでそのまま顔を上げると、翔太が私を受け止めたんだってわかった。
「え、翔太……?」
「行こ」
グイッとそのまま手首を掴まれて、女の子たちとは逆方向に進み出す。チラリと後ろを見たら、明らかに女の子たちは怒ってる。
……あの子たち、翔太のこと探していたのかも。
また面倒なことをしてしまったと思いながらも、翔太につかまれていることにドキドキしている私がいて。
翔太の背中ってこんなに大きかったかな。私全然、気づいてなかったよ。