17-甘い君たち-


ドクン、ドクン、ドクン……


一定のリズムでただ鳴るばかりの心臓の音が、どうか翔太には聞こえていませんように。


「……もう行った、よね」


ふっと、耳元でそうつぶやかれる。声の振動が耳に伝わってくすぐったい。

どうしよう。

こんなにドキドキするなんて、私ヘンだよ。翔太なのに。近くにいるのなんて、いつものことなのに。


「う、うん……」


かろうじて絞りでた言葉を呟いて、早まる鼓動が翔太に聞こえていないことをただただ願った。


「……なんか、ドキドキするね?」


ふって。翔太が笑ったのがわかった。
ドキドキするねって、なにそれ。しかもどうして疑問系なの。

何で、翔太はそんなに余裕なの。

……慣れてるから?女の子の、扱い方に。


「……追い掛け回されてたんだ?」


我ながら、なんて可愛くない言い方。
でも、そんな言葉しか咄嗟に出てこなかった。

離されずにお腹に回された手。
後ろから、翔太の体温が伝わってくる。


「……なにその言い方。妬いてんの?」


ドキドキ、なんて。
こんなマンガみたいなこんな音、知らなかった。しかも、翔太相手に。


「そんなわけないでしょ、バカ」


交わす言葉も、もう幼馴染のそれじゃない。翔太が私のことが好きだって、なんとなく、この伝わってくる熱でわかるよ。

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