17-甘い君たち-

少しだけ間を空けて。ふるふると首を横に振るしぐさに、思わず頬がゆるむ。

ふんわりとした髪の質感と、鼻をくすぐるシャンプーの香り。俺の腕の中に南緒がいることを実感して。


……色々と、ヤバイ。



「文化祭があるだろ?」

「ああ、もうそんな時期かあ…」

「……後夜祭で、男女ペアになって踊るの、覚えてない?」


覚えてないか。
確か去年は、南緒はこの時期風邪をひいていて。

高校生活始めての文化祭を行くことができなくて、すごく悔しがってたのを憶えてる。

南緒がいないなら行く意味もない。俺らも確か文化祭を休んだ。一日中、2人で南緒の部屋にいたんだよな。

もう戻ってこない日々を思い出して、懐かしい、と呟いた。



「……なるほど。
それのペアになって、って女の子達に追いかけられてるんだ」

「うん……まぁ、そういうこと」

「ふうん……」


さっきとは裏腹に、興味なんてまるでなさそうに話に食いついてこない南緒。

なんだか面白くない。俺は南緒のお腹に回した手にぎゅっと力を入れた。


「南緒は、誰と踊りたい?」


ぴたりとくっついた南緒の背中が少し震えた。わざと耳元でささやく俺も、優しくないよな。

でもだって、この反応がたまらない。


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