河の流れは絶えず~和泉編~
彼女は昼過ぎにいつもここへやって来た。

「こんにちは。」

そう言って襖を開けながら中に入ってくる。

来る時には大抵、下でお茶を貰ってから来るので、自分のかばんとお茶ののった盆とを持ってくるので結構大変そうにしている。

襖が開くといつも俺は彼女の手からすぐに盆を受け取り、襖を閉める。

「やあ。」

これが最近、二人で交わす挨拶になっている。

彼女はかばんを置きながら、俺のほうを見て、

「あら?何か勉強されているんですか?」

と言いながら、俺が持ってきた本を拾う。
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