河の流れは絶えず~和泉編~
すると、玄関をガラガラと開ける音が聞こえて来、

「お志乃!いま帰ったよ、ただいま。」

とおじさんの声が聞こえてきた。

その声に、弾かれたように、すくっと立ち上がり、出掛けに俺の方を向いて、

「今度、ここへ連れて来ておくれな。え?」

そう、にこやかに微笑んで踵を返しながら、

「はいはい。おかえりなさい!」

と玄関へ向かって行った。

少し離れた玄関から聞こえてくる話し声を聞くともなしに耳に通しながら、夜露の匂いが立ち始めた庭を眺めた。
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