河の流れは絶えず~和泉編~
あの、大野木とかいう子は、ここまで足を運んで来たという。

彼女の気持ちを受け入れることができないと、言ったはずなのに懲りもせず文を寄越して来る。

たいした執着心だとは思ったが、同時になにか言いようのない気持ち悪さを感じる。

彼女にはあの飯塚と同じにおいを感じたことがあった。

華やかな笑顔の裏に潜む尊大さや傲慢さが彼女の自尊心を傷つけたことによって、容易く垣間見ることができてしまった。

闇が深くなってゆく初夏の、夜のしじまが見せる清清しさと似通うことのない、澱を孕んだ闇を彼女から感じて、それはある種の危惧を俺に植え付けることとなった。
< 143 / 183 >

この作品をシェア

pagetop