河の流れは絶えず~和泉編~
奥から出てきたのはこの店のご主人で五十台のごま塩頭でめがねをかけたひょろりとした体躯の人だった。

ご主人はその手に一冊の本を携えていて、それは俺のかねてからのお目当ての本だった。

小山内教授がすすめてくれた、社会心理学に関する本でなかなか手に入らないものだった。

本の代金を払い、おじさんに少し本に関する情報を聞き出す。

外で待っているあの娘のために、彼女がよく読む海外文学の情報を聞いてみた。

すると、おじさんは、いろいろ持って来ようとしてくれたが、とりあえず、ジャンルのリストさえあればいいか、と思い、その場で聞いてみた。

おじさんはつらつらと、思い出しながら教えてくれ、俺はそれを走り書きした。

「なんだ、えらく急いでんだな。」

おじさんはちらっと外を見て聞いてきた。
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