河の流れは絶えず~和泉編~
其の壱 出会い

ひとつ

新学期を迎え、すでにひと月経とうとしていた。

俺はその日大学から、友達の家に行って、以前から聞いていた本を借りに帰って来た途中だった。

もうすでに先程から降りしきる雨に道はすっかりぬかるんでしまっている。

2回生までほとんど一般教養的なことばかり習わされて、少々飽きてきた矢先、3回生からいきなり専門分野をごそっと採らされ、急にエンジンを駆けられた車のごとくぶんぶんにどっぷりと学生を味わわされている。

今日もこれから家でこの借りてきた本を隅から隅まで読んで、今後の勉強に備えないと、と、さっき向こうの家でちらっと見てきた感想がそう急き立てていた。

本を読むことが無性に楽しく、一高へ通うためにここへ居を移してから、いわゆる古本屋という店を片っ端から歩き回り、自分の欲しいものを探し出した。

おかげで、部屋は本だらけでそろそろ読まなくなった本を処分しないと寝る場所も取れなくなりそうなありさまだ。

とにかく、借りてきた本は濡らさないように気をつけ家路を急いでいた。
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