河の流れは絶えず~和泉編~
「やあ、おばさん。こんにちは。」

体を拭きながらあいさつをした。

「はい、こんにちは。汚れた服は向こうへ出しておおき。あとで洗うからね。」

ここは一高時代からずうっと借りている下宿で、おばさんには飯の世話と洗濯をしてもらっている。

何にも知らずに、片田舎から出てきた15歳の頃から、何くれとなく世話を焼いてくれているおばさんだが幾分、口やかましい。

「もう、そろそろ中食(ちゅうじき)の準備をするけど、ここで食べるかい?」

「いや、今日も外で食べるよ、これから人に会わないといけないから。」

袴を履いて帯を締めた。
< 21 / 183 >

この作品をシェア

pagetop