河の流れは絶えず~和泉編~
「僕の下宿の近くにきぬたやという店があるんですけど、飯がすこぶるうまいんです。今日はそこで食べませんか?」

前々からこの店に彼女を連れて行きたいとずっと考えていた。

あちこちの店をだいぶ食べ歩いて回ったが、やはりきぬたやが一番うまいと思う。

あの店の飯を食べて彼女はなんと言うだろうか。

「でも、あたしみたいな女学生が入って目立ちませんか?」

そういう彼女の顔に幾分不安の色が見て取れた。

まあ、わからなくもない。

あの店はうちの学生が屯(たむろ)しているところだし、確か彼女が通っている学校では異性交友を禁じていた。
< 29 / 183 >

この作品をシェア

pagetop