河の流れは絶えず~和泉編~
「どうかしましたか?」

あくまで通りすがりのように声をかけた。

彼女は瞬間、びくっとして俺を見た。

「え?」

と、ひどくびっくりした様子だった。

「あ、あの、、、、。実は鼻緒が、切れて、、、。」

よく見れば両方共だ。

「うわ、こりゃひどいな。しかも、両足なんて。、、、よし、ちょっと貸して。」

たしか手ぬぐいを持っていたな、と袂(たもと)をまさぐると少しよれた手ぬぐいが出てきた。

あんまりきれいじゃないがまあいいか、と思い、裂いて鼻緒を作った。

「えっ!だめです。そんなことしちゃ!」

と彼女は驚いたらしく、そう言った。

「いいよ、たいしたことじゃない。それより、下駄が直らなくちゃ君が困るだろ?」
< 4 / 183 >

この作品をシェア

pagetop