河の流れは絶えず~和泉編~
しかし、それでどうのとすぐにうまくいくもんじゃあない。

現にいま彼女の気持ちを垣間見たばかりだ。

「で、でも言い伝えなんでしょ?そんなの。今頃信じている人なんていやしないわよ、まったくもう。おばちゃんてば。さっ、食べましょ、佐脇さん。いただきます!」

彼女の方は幾分憤慨しているらしくみつまめを勢いよく食べだした。

女将さんは分が悪そうな顔をしながら

「まあねえ、言い伝えだしねえ。さあさ、あんたもお食べな、気を悪くおしでないよ。」

とそそくさと奥へ下がってしまった。

彼女はみつまめを食べている頭を上げようとせず、ずっと下を向いたままだ。
< 66 / 183 >

この作品をシェア

pagetop