河の流れは絶えず~和泉編~

ふたつ

「ま、待って!」

と彼女が俺の袂を掴んでそう言った。

思わずひっくり返りそうになったが、彼女の言った言葉に天にも昇る気持ちになった。

「あの、何も御礼もせずにお別れするのは申し訳なくて。」

、、、、こんなんで礼なんてなぁ、別に。

「いいよ、礼なんて。」

「でも、せめて、お名前だけでも。」

「僕は、佐脇です。佐脇浩平(さわき こうへい)。」

「わたしは沢です。」

「え、沢って、もしかして沢医院の?」

いやな予感がした。

「え?あ、はい、沢 夏葉(さわ なつは)です。」

うわっ、てぇことは
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