うしろから、抱きしめて……
あの頃と同じように校舎の入り口まで歩き始めると、校舎地下の部室の入り口や発声練習をしていた円形体育館のベランダが見えてきた。
懐かしさに目を細め、当時を思い出しては笑みをこぼす。
本来なら来客用入り口から直接職員室まで行けばいいものを、あまりの懐かしさから学生専用入り口へと歩いて行ってしまった。
下駄箱を通りぬけ靴を脱いで顔を上げると、目の前に『就職相談室』の文字……。
「しまった……」
5年もの歳月が、そこにその部屋があるのを私の記憶から消し去っていた。
慌てて踵を返すと、背後から扉が開く音が聞こえ声を掛けられた。
「そこで何をしてるっ!!」
5年もの歳月が経っているのに、私の記憶から消えていなかった声に驚き振り向くことが出来ないでいると、その声の主が私をもう一度驚かす言葉を呟く。