うしろから、抱きしめて……
「……亜衣?」
勝手に消えた私に怒ってもいいはずなのに、5年前と変わらない愛おしそうに私を呼ぶ声。
近づいてくる足音に、心が震えだす。
華奢なのに程よくついた筋肉質の腕に後ろから抱きしめられると、5年前を思い出してしまい、思わずその腕を掴んでしまう。
「薬指に指輪……」
彼氏からもらった指輪を見つけられ、動揺する私の耳朶を噛む。
「外して……」
言ってる意味が分からないまま、指輪をはずす。まるで催眠術にでもかかっているように……。
「もう逃さない……」
そして私は、その催眠術にかかったふりを続けてしまう。
心の最奥で炎が再び燃え上がるのを感じながら……。