ギャップしおりん
「何してんの?」
「さぁ?じゃぁまた」
バイトって言うのは嘘だけど、ただ帰りたかったから言った口実だった。
私は教室に鞄を取りに行って、学校を出た。
9月と言ってもまだまだ暑い。
制服のカッターシャツが肌にまとわりつく。
歩いて15分くらい経つと、駅が見えて来た。
私は鞄から定期券を出す。
改札機に定期券を通すと、ピーッと音とともに改札口が閉まった。
「げっ、定期切れてるじゃん」
よく見ると、定期の期限は昨日までだったみたいだ。
朝は遅刻しそうだったから、お母さんに送ってもらったんだった。
だから定期が切れてることに気づかなかった。
私はお金を入れて定期を更新する。
プラットホームに、足を一歩踏み出す。
1分もしないうちに電車が来たから乗り込む。
いつもならもっと待つのに今日はついてる。
椅子に腰掛けると、丁度いいタイミングで携帯が震え出した。
バイブが鳴り終わり、静かになった携帯を開くと、ディスプレイに浮かぶ文字。
“新着Eメール1件”
誰だろう、そう思いながら決定ボタンを押すと、友達のフォルダにメールが来ていた。
≪さっき岡崎くんと居たでしょ?邪魔しちゃ悪いから先に帰ったよ★ 里佳≫
私はメールを見ると、返信をせずに携帯を鞄に放り入れた。
里佳のバカ!声掛けてくれれば良かったのに。