ギャップしおりん
部室の前に着くと、近くに木陰があったからそこに腰を下ろした。
私は少しでも冷たい風がくるように、手で風を起こす。
あっつい…
まだ夏の延長戦って感じ。
空を見上げると、太陽がギラギラと輝いていて私の肌を少しずつ焦がした。
大の字になって、寝転ぶ。
私の学校は高台にあるから空が綺麗に見える。
「お待たせ、待った?」
「べっつに~」
ボーッと雲の流れを見ていると、岡崎が息を切らしながら走ってきた。
私は、制服についた砂を掃いながら起き上がる。
部活のジャージだろうか。
いつも制服姿しか見慣れてないからジャージ姿があまりにも新鮮で思わずドキッとしてしまった。
「てか、水谷の制服汚れてるよ?」
「げっマジ?何処?」
「カッターシャツ全体的に。体操服に着替えてきたら?」
「今日体操服とかないんすけど…」
体育もないのに体操服持って来る奴は居ないっての。
制服は汚れちゃうし、最悪だ。
自分が寝転んだのが悪いんだけど…
「俺、予備にジャージ持って来てるから貸すよ」
「えっ、いいっす。いいっす。こんままでやるからさ」
わざわざジャージを借りて仮を作りたくない。
面倒なことは嫌い。
「部室汚いからもっと制服汚れるよ。はい、これに着替えてきなよ」
岡崎は、肩に掛けていたエナメルバックを地面に置くと、袋に入れたジャージを私に渡して来た。
…ここまでする意味が分かんない。
別に私が汚れようが何しようが岡崎には関係ないのに。
「…ありがと、着替えてくる」
私は体育館の中にある女子更衣室に入り、鍵を掛ける。
…はぁ、なんかあいつと居るとあいつのペースに呑まれる気がする。
岡崎のジャージは甘い洗剤の香りがした。
いつも岡崎から香る良い匂いだった。
それだけのことなのに…何でドキドキしてんだ、私。
片思いをしてる乙女かってのっ!
今までに、感じた事のない感情が込み上げてくる。