ギャップしおりん


ガチャッ

部室のドアを開けると、想像を絶する光景がそこにあった。



「ケホッ…何ここめちゃくちゃ誇りっぽいんすけど」


「廃部になって2年間経つけどずっと掃除してないらしいよ」



部室の中を見渡すと、酷いってもんじゃない。
床は砂まみれで、カーテンも黄ばんでて…空気中にはあり得ないほど誇りが舞っていた。



「マジありえない。岡崎、後でなんか奢れよ」


「仕方ないな…てか、保健室からマスク持って来た」


なんだこいつ…どんだけ気が利いてるんだ。
女子は、岡崎のこういうところが好きなのかな?


って、私何考えてんだ!私らしくない。
さっさと掃除して帰ろう、うん。





「きゃぁ!!!」


雑巾で棚を拭いてると、棚の上に積み重ねてあったかび臭いマットが私の身体全体に覆い被さった。



「おい、大丈夫か?」


岡崎は、マットを退かしながら私の手を引いてくれた。
私はジャージについた砂埃をはらう。



「大丈夫…」


川嶋の奴…何でこんな汚いとこ掃除しなきゃなんないんだよ。
明日文句言ってやろ。





「ふっ」


「は?」


突然、岡崎が私を見ながら吹き出した。
何笑ってんだよ、こいつ…




「何?なんか文句ある訳?」


「いや、水谷でも女子っぽく雄叫びあげるんだなって」


「…喧嘩うってんの?」


「違う、違う。でも俺はそのまんまの水谷が好きだけどね」



岡崎はそう言いながら、ゴミ袋にマットを入れだした。
私はがむしゃらに箒で床をはわく。



こいつ、天然?
よくベタな台詞とかサラッと言えるよな。


言われた身なのに、こっちが恥ずかしくなる。



    * * *    



「そろそろ帰ろっか」


「うん」


まだ部室の2割くらいしか綺麗になってなかった。

…結局、一週間雑用しないといけないのかよ。



「部室の鍵返して来るから校門で待ってて」


「ういっす」


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