蕾~桜の木の下で~
...いやいやいやいや。なに妄想してんの、彼方くん(笑
昨日まで朝倉先輩へ向いていた気持ちが俺に...なんてことは絶対ないから。

はい。正気に戻んなさい、俺!!

ぶんぶんと頭を振ってみる。
...絶対ないのに、唯と付き合うという妄想は消えてくれない。

くどい くどい くどい!!!
どうしたってそんなことないだろ。

そんな風に俺が頭の中で間抜けな妄想の自問自答を繰り返していると...

不意に、飛び込んできた。

「ほらっ!行くよ」

「...って、どこに?
おい、唯?」

掴まれた。唯の手に、俺の腕が。
始業の直前、俺たちは教室のどよめきを背に...走り出す。

唯の脚は意外に速くて、俺のほうが息が切れそうだ。
掴まれた腕と翻るスカートに、俺の鼓動はせわしなく動く。

ぁぁ、そんなに走るなってば。
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