4*1133322〜ダイスキ〜
そして、気がついたら。
右に居たはずの叶哉が居なかった。
甲高いブレーキ音と、わけがわからなくなって出た私達の掠れた悲鳴。
車が走った跡には、血。
車は、ハンドルがきいていないみたいで、しばらくすると電柱にぶつかった。
おっきい地震が来たみたいな地響きがして、固く目をつむった。
地響きの反射ででもあったけど、目を開けるのが怖かった。
きっと、目をあけたら想像通りだろう。
耳のそばでは、璃紗の声や言葉にならない声が。
ゆっくり、ゆっくりと開く目。
静かな空気の光が、憎くも目に差し込む。
視界には、無造作な赤色がそこらじゅうに飛び散っている。
車の真ん前のガラスに、叶哉の髪の毛がへばりついている。
想像を、絶した。
涙なんか出なくて、頭がぐちゃぐちゃにこんがらがって、整理が追いつかない。
「叶哉…叶哉…叶哉…叶哉…叶哉」
壊れたお人形みたいに、叶哉の名前をぶつぶつと呟く。
重力がおかしくなったと思うと、ぐらりと視界が揺れて真っ青な冬空は、掻き回される。
そして、意識を手放した。