囚われの歌姫
第一章
出会い
今日は私の高校デビューとかいうやつ。
少しーー誰がなんと言おうが少しだけ小さい身長に、ほのかに茶髪の腰辺りまである長い髪をみつあみで二つに分けた、赤縁のメガネを掛けた女の子。
それが私。
胸元のセーラー服についているネームには、
『神無月 梨亜』
という私の名前が彫られている。
セーラー服の制服は私には大きくて、袖が手の甲を隠してしまっている。
「ーー……はぁ、」
一度溜め息を吐いたところで頭に衝撃が走った。
「う"っ……痛い」
鞄を持っていない手で衝撃を受けた頭をおさえる。
……痛いんだけど。
「よ、梨亜!」
私を叩いたことは何とも思っていないのか、爽やかな笑顔を私に向けてくる、アホ。
「…………颯人(ハヤト)。…死ね、アホ」
「おい、幼馴染みに向かってアホとは何だアホとは」
口を尖らせて私のほっぺたをむぎゅっと掴む。
颯人は幼馴染みで。
黒猫を連想させるような、少し可愛らしい顔立ち。目の端には俗に言う泣きボクロがあって、お目めぱっちり。
髪の毛は真っ黒で、髪を赤いピンでとめている。
そんな容姿からか、女子にも少なからず人気はあるみたいで、私もこの目で何度か颯人が告白されているのを見ていたりする。
早く付き合えばいいのに。
そう言ったら、
女ってめんどくさいじゃん。
それに、梨亜が悲しむだろ?
とかぬかすから「……悲しくない」と一応返して、叩いといた。
だけど、何だかんだでずっと一緒にいて。…………勝手に颯人がついてきたんだけど。
高校だって、私がこの高校に行く、と言ったらじゃあ俺も、とそんな理由でついてきた。