妖(あやかし)狩り・参~恋吹雪~
「用事が済んでからも付きまとわれるなんて、鬱陶しいだけだ。あいつはあくまで媒体にするための器だ。それだけのモンだよ」

「だって、接吻されたら、ころっと参るって言ったのはお前だぞ。それを承知でしたんだろ? お前も、女官殿のことを気に入った故じゃないのか?」

「・・・・・・あのな」

 そはや丸は大きく息を吐きながら、がしっと呉羽の額を掴むように手を置いた。
 熱い熱が伝わる。

「気に入った女子なんだったら、後で浄化を施すなんてことするか。大体俺は、ヒトの女子なんざ皆同じにしか思わん。区別もしてないから、あいつのことだって忘れていた。力もない、ただの女子なんざ、どうだっていいさ」

 そして、ずいっと顔を近づける。

「それに、お前は俺に接吻したって、何ともないのだろ。それとも俺に参ってるのか?」

 小憎たらしく笑って言ってやるが、そはや丸的には、内心相当な賭けに出たつもりだ。
 呉羽の気持ちが知りたい。
 その思いが、強くなっている。

 おそらく先の呉羽の言葉で、彼女にとって、少なくとも己は傍にあるべきものだという自信が出来たからだ。
 己は呉羽にとって何なのか。
 単なる相棒か、刀としてしか見ていないのか。

 自分自身の気持ちは深く考えないよう心の隅に追いやって、ただ呉羽の気持ちに踏み込んでいく。
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