妖(あやかし)狩り・参~恋吹雪~
 ゆっくりと身を起こしたそはや丸が、振り返りながら、ぎろりと睨む。

「・・・・・・邪魔しやがって・・・・・・」

 ちょん、と床に立ち、小首を傾げる烏丸だったが、そはや丸の視線は、瞬時にその後ろへ伸びる。
 そこには右丸が、立ち尽くしていた。

「え、え? そはや丸、何してるのぉ?」

 こちらに背を向けて座っているそはや丸の向こうには、呉羽が寝かされている。
 烏丸が部屋に入ってきたときには、そはや丸は、呉羽に覆い被さって・・・・・・。

「ちょっとちょっとそはや丸っ。お、お姉さんに、何してるのよぅ」

 同じ場面を見た右丸は、真っ青な顔でそはや丸を凝視している。
 烏丸と違い、口も利けないほど衝撃を受けたらしい。

 呉羽は目を閉じたまま、くたりとしている。
 気を失ったのか、眠ったのか。
 そはや丸は、挑発的に右丸を見た。

「何って、見ての通りさ。状況を見りゃ、わかるだろ」

 ふふん、と鼻を鳴らし、思わせぶりに眠る呉羽の髪を撫でる。
 だが次の瞬間には、真剣な表情になって、右丸を真っ直ぐに睨み付けた。

「呉羽は俺のモンだぜ。お前なんかにゃ渡さねぇ」

 いつもの軽口ではない。
 烏丸も、驚いたようにそはや丸を見上げた。

 いつも思わせぶりなことは散々言うが、ここまではっきりと言ったことはない。
 本気で言っているということは、そはや丸から発せられる強い気でわかる。

 右丸は、ごくりと生唾を呑み込んだ。
 空気が張り詰める。
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