妖(あやかし)狩り・参~恋吹雪~
「あ、あなたは、ほたる様をお気に召したのでは?」

 ややあってから、右丸がようよう口を開いた。
 そはや丸は、ふ、と息をつく。

「この俺様が、あんな女官を気に入るか。お前から烏丸を取り出すために、必要だったから使ったまでのこと。別にあいつじゃなくたって構わなかったさ」

 吐き捨てるように言うそはや丸に、ひく、と右丸の顔が引き攣る。

「な、何てことを! あなたは誰でも良かったと仰るんですか?」

「そう言ってる」

 何をそんなに怒ってるんだ、という風に、そはや丸は面倒臭そうに答えるが、その態度が、さらに右丸を激昂させたようだ。

「そんないい加減な気持ちで、ほたる様を弄ぶなんて、何て人なんだ! ほたる様は本当にあなたのことを、心から想っているのに!」

 どうもまた、話がややこしくなっているようだ。
 が、ここでそれに気づいているのは、間できょろきょろと二人を見ている烏丸だけだろう。

「そんないい加減な気持ちだったなんて・・・・・・。ほたる様に、何と言えばいいんだ・・・・・・」

 俯いて辛そうに言う右丸を、烏丸が心配そうに見る。
 そはや丸は、ちょっと考え、烏丸を手招きした。

「おい。ところでこいつは、何しに来たんだ」

 立ち尽くす右丸を指し、ちょんちょんと飛んできた烏丸に問う。

「さっき言ったでしょう~。お餅持ってきてくれたのよぅ。左大臣家でお餅搗きがあって、皆に振る舞われたんだって。いいねぇ」
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