妖(あやかし)狩り・参~恋吹雪~
「ふん。それにかこつけて、のこのこ出張ってきたってことかい。生憎だったな、呉羽はこの通り、大怪我して枕も上がらねぇ」

 え、と右丸は顔を上げ、身を乗り出す。

「く、呉羽様が、お怪我を・・・・・・?」

「そうなのよ~。ちょっと前に、仕事でね~。お姉さんらしくもなく、何だか元気がなかったからさぁ、心配だったんだけど。案の定」

 やれやれ、というように、烏丸が肩(?)を竦める。
 そはや丸が、その言葉に、ちょっと反応した。

「元気がなかった?」

「うん。きっとねぇ、そはや丸のせいよ?」

 烏丸にしては珍しく、そはや丸に向かって頬を膨らます。

「あの頃、ずっとそはや丸、刀だった・・・・・・」

 普通にぺらぺらと喋っていた烏丸が、慌ててあわわ、と羽で嘴を押さえた。
 ちら、と背後の右丸を見る。
 右丸は、そはや丸の正体を知らない。

 幸い何のことかわからず、右丸は特に何の反応も示さない。
 それよりも、呉羽の容態が気になるようで、目はそはや丸の向こうに横たわる呉羽に釘付けだ。

 烏丸は、こほん、と咳払いをし、そはや丸に向き直った。

「・・・・・・お姉さんのこと、放ったらかしてたじゃない」

「あ?」

 そはや丸の片眉が上がる。
 その表情に、烏丸はびびったようだが、ちょん、と床を蹴って、そはや丸の膝に飛び乗ると、背伸びをしつつ、彼に耳打ちした。
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