妖(あやかし)狩り・参~恋吹雪~
「大将軍?」

「遙か昔の、最強の武将だ。初めて俺を使いこなせた人間だな。初めて主と認めた人間だ」

「ふーん。凄いヒトだったんだねぇ。その人の傍では、人型だったの?」

 そはや丸は、静かに首を振った。

「はっきりと意思を持ったのは、その頃かも。それでもまだ、俺の纏う気の変化を、大将軍が読み取る程度か。言葉を喋ったりは、しなかった」

 烏丸は、大人しくそはや丸の膝で、彼の話を聞いている。
 今まで深く考えたこともなかったが、よくよく考えてみれば、そはや丸がこれほど人間的に振る舞うようになったのは、ごく最近。
 呉羽と過ごすようになってからではないか?

「あのさ・・・・・・」

 躊躇いがちに、烏丸が口を開く。

「そはや丸は怒るかもしれないけど・・・・・・。そはや丸はさ、お姉さんのこと、大事に想ってるよね」

「・・・・・・主だからな」

 怒られると思っていた烏丸は、意外に静かに言ったそはや丸に、構えていた身体をほぐした。

「お姉さんはね、きっと、そはや丸が刀でなくても、おんなじだと思うよ」

「・・・・・・あいつの男嫌いは、相当だぜ」

「でも、だったら何で、そはや丸は男の格好してるの?」

 きょとん、と言う烏丸に、そはや丸は、僅かに目を見開いた。
 自分の人型に、疑問を持ったことなどなかった。
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