妖(あやかし)狩り・参~恋吹雪~
「そはや丸は、元々ヒトの形は持ってないんでしょ。だったら別に、女の人でも良かったんじゃないの? お姉さんが男嫌いなんだったら、そうしたほうが、そはや丸だって楽でしょ?」

 そはや丸は口を開いたが、言葉が出て来ない。
 烏丸の言うとおり、そはや丸は刀なのだから、性別などないはずだ。

「まぁそはや丸のその言葉遣いじゃ、女の人にはなれないかもだけどさ。でもそれだって、ヒトと普通に交わって暮らしてるわけじゃないんだから、別に良いじゃない。お姉さんだって、相当荒い言葉遣いだよ」

 黙りこくったそはや丸に、烏丸は、ふと思いついたように、顔を上げた。

「ねぇ、そはや丸が初めて人型になったのって、いつ?」

 考えが深いところに及ぶと、踏み込んではいけないところにまで踏み込んでしまいそうで、そはや丸は、耳に入る烏丸の質問に、ただ答えるだけに努めた。

「いつだろう・・・・・・。大将軍が死んで・・・・・・それからいろんな武将の手に渡った。でも、どいつもこいつもつまらねぇ奴で。人型はおろか、喋る気にもならなかった」

「ふぅん。じゃあ今は、随分楽しいんだね」

「楽しい?」

 再びそはや丸の片眉が上がる。
 が、烏丸はびびることなく、うふふ、と笑った。

「だって、よく喋るし。そっか、人型でないと、ちゃんと普通のヒトみたいに喋れないものね」

 ぽん、と手を叩くように羽を叩く烏丸に、そはや丸は固まった。
 呉羽との記憶が蘇る。
< 108 / 200 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop