妖(あやかし)狩り・参~恋吹雪~
第七章
『そはや丸。この子を頼みます』

 十年ほど前、鳥辺野の奥の洞窟で、着ているものから肌・髪の毛まで真っ白な物の怪が、一人の少女を指して言った。

『この子は、このような妖の中で育つには勿体ない。かといって、ヒトの中では生きづらいでしょう。力も相当なものです。・・・・・・ついていってあげてください』

 そう言って、白い物の怪は、洞窟の奥に据えられていたそはや丸を手に取った。

『ううっ』

 途端に物の怪が、苦しそうに呻く。
 そはや丸を持っただけで、その強烈な妖気に取り込まれそうになり、物の怪はよろめいた。

 だがそはや丸は離さず、よろよろと傍らに眠る少女に近づいた。

『多少なりとも、妖気に耐えられるように、呪(しゅ)を施しました。あなたほどの妖気に耐えられるかは、わかりませんが。・・・・・・耐えられなければ、この子はそれまでだったということです』

 捧げ持ったそはや丸を少女の右側に添えると、白い物の怪は、力尽きたように、がくりと膝を折った。

『た、頼みましたよ・・・・・・』

 それだけ言うと、物の怪は霧のように薄くなり、掻き消えた。
 妖気を吸われすぎて消滅したのか、ただ姿を保てなくなっただけなのか。

 そのときからそはや丸は、少女---呉羽と二人になった。
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