妖(あやかし)狩り・参~恋吹雪~
「・・・・・・何でお前がここにいる」

 雪を割って現れたのは、右丸だった。
 そはや丸の低い声に、若干気圧されたようだが、すぐにぺこりと頭を下げた。

「先日は、ありがとうございました。あの、あなた様が私を救ってくれたのですね」

「救う?」

 そはや丸は怪訝な顔で右丸を見る。
 そはや丸には『ヒトを救う』という心などない。

「あの折、何があったのかは、さっぱりわかりませんでしたが、あなたが烏丸を引き出そうとしてくれたのは、意識の隅で理解しました。お陰で、すっかり身体の不調もなくなりましたし」

 はきはきと言い、右丸は再度、ぺこりとお辞儀する。

「てめぇなんざ、どうだっていいさ。俺は烏丸を助けただけだ」

 ぷいっと顔を背け、そはや丸は今度こそ踵を返した。
 そのまま歩き出す。

 本当のところは、烏丸だって、呉羽に言われなければどうだって良かったというのが正直なところだ。
 そんなそはや丸を、右丸が慌てて追いかける。
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