妖(あやかし)狩り・参~恋吹雪~
「何で俺は、人型を取ったんだろう」

 そはや丸が、ぽつりと言う。
 己が取り憑いたことを、説明する必要があったからか。

 そんなことは、本当に力あるものなら、尋常でない妖気を帯びた刀を見ただけで、わかるだろう。
 身体には紋様がある。
 紋様と刀の関係ぐらい、力あるものならわかるのだ。

 それに、そはや丸は、呉羽を主と認めて取り憑いたわけではない。
 そはや丸に取り憑かれて、そはや丸の妖気を抑え込めて初めて、主であると認めるのだ。

 まだほんの幼子だった呉羽に、そのような力があるなどとは、正直あまり思ってなかった。
 ただ白蛇が言ったように、このガキが相当な力を持っているというのなら面白いと思っただけ。
 無理なら食ってやるつもりで、呉羽に取り憑いたのだ。

「そはや丸は、取り憑くときに手加減したの?」

「してない。手加減どころか、食うつもりだった。けど何で、それならわざわざ人型で呉羽の前に現れたんだ。人型じゃないモノのほうが、あそこには多かったのに」

 むしろヒトのほうが、呉羽は驚くのではないか。
 ヒトより妖の中で育った呉羽だ。
 妙な形のモノのほうが、見慣れている。

「そはや丸はさ、刀の状態でも、ずっとお姉さんを見てきたのよね」

 烏丸が、眠る呉羽とそはや丸を交互に見ながら言った。
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