妖(あやかし)狩り・参~恋吹雪~
「ずっと見てたらさ、それなりに情も湧くんじゃない?」

「情?」

 ふん、とそはや丸は鼻を鳴らした。
 が、俯いたまま、口角を僅かに上げただけだ。

「お前と俺は、根本から違うんだぜ。お前はどちらかというと、ヒトに近い。・・・・・・生きてるからな」

 そのまま、そはや丸が言う。
 どこか投げやりで、どこか悲しげだ。
 烏丸は、じっとそはや丸を見た。

「・・・・・・お前はその気になれば、ヒトと子を成すこともできるだろ」

「そうねぇ。烏天狗は基本的に男ばっかだもの。おっきくなったら、ヒトの女子に子を産んでもらうのよね」

 答えながら、ん~、と烏丸は首を捻る。

「でも、ヒトより長い命なのは同じじゃない。そはや丸と違って、おいらたちにも寿命はあるけど、ヒトよりは随分長いよ? 子を成せないだけで、そはや丸とおいらたちは、ヒトからしたら別に変わらないと思うけど」

「どうかな。生きてるモノと命のないモノとの違いはでかい。お前は呉羽を暖めてやれるが、俺はそれすらできない」

 そろ、とそはや丸は手を伸ばして、呉羽の髪を撫でた。
 何故自分は、人型で呉羽の前に現れたのか。
 その答えが、多分---これだ。

 そはや丸は、手に感じる呉羽の髪を撫で続けた。
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