妖(あやかし)狩り・参~恋吹雪~
 それに、食ってしまえば、呉羽は己のものになる。

「結局俺は、呉羽を自分のものだけにしておきたかったのか」

 ちり、とそはや丸の気が満ちる。
 烏丸が、慌ててそはや丸の膝から飛び降りた。

 周りの空気が邪悪なものに変わっていく。
 そはや丸の妖気が強くなり、彼の双眸が妖しい光を宿す。

「そはや丸っ。落ち着いて! お姉さんを殺す気?」

 烏丸が、ばさばさとそはや丸の周りを飛びながら叫ぶ。
 今下手に触れると、一瞬で取り込まれてしまいそうだ。

 呉羽が、薄く目を開いた。

「他の奴に盗られるぐらいなら・・・・・・その前に、完全に俺のものにしてやる」

 呉羽の額に置いたそはや丸の手から、びりびりとした妖気が迸る。

「やめてっ! やめてよぅっ!!」

 烏丸が泣きながら、ばさばさと忙しなく飛び回る。

「お姉さんだって、きっとそはや丸のこと好きだよっ! そはや丸もお姉さんのことが好きなら、何も問題ないじゃない!」

「わかってねぇな。それだけで上手くいくのは、人間だけなんだよ。お前らのような妖ですら、そうそう上手くはいかねぇってのに、命のない俺が、ヒトと上手くいくわけねぇだろ」

 そはや丸の身体が、不気味な青い光に包まれる。
 手から光は呉羽にも及び、烏丸は必死になって呉羽を見た。
 そこで初めて、呉羽が目を開けているのに気づく。
< 114 / 200 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop