妖(あやかし)狩り・参~恋吹雪~
「おっお姉さんっ」

 がばっと呉羽に近寄り、烏丸は訴える。

「しっかりして! そはや丸を止めてよぅ」

 不意に、呉羽の顔がしかめられた。
 右腕を押さえて、身体を丸める。
 右腕の紋様が、そはや丸に呼応して光を放ちだしている。

「呉羽。例えヒトとモノというあり得ない関係だとしても、俺はお前が欲しい」

「やめてよぅっ! そんなことしなくたって、お姉さんはそはや丸のこと大事だよぅっ」

 うわあぁん、と烏丸が大声で泣き出した。
 その頭に、そろ、と呉羽が手を置いた。
 にこ、と微笑む。

「危ないぞ。離れておかないと、お前まで巻き込まれる」

「お、お姉さん~」

 ぼろぼろと涙を流す烏丸を、ちょい、と押して離すと、呉羽は上体を起こしてそはや丸を見た。
 見たこともないほどの妖気を纏い、そはや丸は光る目で、真っ直ぐ呉羽を見ている。

「お前が望むものが何なのか・・・・・・よくわからんが。好きにするといい」

 恐れるでもなく言う呉羽に、そはや丸は、少しだけ口角を上げた。
 これが、呉羽の魅力だ。

 これほど恐ろしい妖気を前にしても、怯むことなく真っ直ぐに見る。
 その姿は、まさに『巫女姫』と言うに相応しい。
 何人(なんぴと)をも、ひれ伏させるだけの威厳があるのだ。

 そはや丸でさえ、ぶるっと身震いした。
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