妖(あやかし)狩り・参~恋吹雪~
 そはや丸は、呉羽を抱きしめたまま首を振る。

「どうかな。でも、右丸が同じ事をしたらどうだ?」

「ええっ」

「男は誰でも、そういう欲望はある。だからこそ、昔からお前を襲う奴が多いのさ。お前は美しい。さらに、知れば知るほど惹かれる女だ。ただ美しいだけでも、欲望を掻き立てられるのがヒトの男だ。お前なんざ、男は放っておかねぇよ」

 ここまでそはや丸が呉羽を褒めるのは初めてだ。
 もうそはや丸自身も、自分が何を言っているのか、わかっていないのだろう。

「言っただろう。俺はお前以外の女子に興味はない。お前以外に接吻するのを拒むのも、そのためだ」

「で、でも。女官殿には、したじゃないか」

「あれはお前に頼まれたからだ。でも、そのお陰であんな女に付きまとわれるんだったら、やるんじゃなかった」

 そして、ぐい、と呉羽に顔を近づけた。

「俺は、お前にしか、こういうことはしたくない」

 唇を押しつける。
 そはや丸の口から勢い良く妖気が流れ込み、呉羽は息苦しさに、顔を背けて唇を離した。

「うっ・・・・・・けほっ」

 いつも妖気をわけてもらうときも、こんな激しく流れ込んでは来ない。
 呉羽の負担にならないよう、そはや丸が加減してくれているからだ。
 だが今は、そんな余裕もない。
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