妖(あやかし)狩り・参~恋吹雪~
「そはや丸っ」

 いきなり呉羽が、そはや丸の襟を掴んだ。
 何か閃いたような、明るい表情だ。
 そはや丸は驚いて、呉羽を見た。

「その気持ち! 同じだ」

 そはや丸が、眉間に皺を寄せて首を傾げる。

「他の人を見る姿を見たくないっていうの。私も、そはや丸が女官殿の元へ通う姿は見たくない。それと、一緒だろ?」

 そはや丸は、何か言おうと口を開いたまま、呉羽を凝視した。

 そういえば、そんなことを口走った。
 そはや丸がほたるの元へと行くのなら、取り憑いた右腕を斬り落とせ、と。
 それで命を落としてもいいとさえ言った。

「同じように思うってことは、私とお前の想いは、一緒ってことだろ?」

「・・・・・・」

 出鼻を挫かれ、そはや丸の妖気が、ふっと静まる。
 呉羽が、そはや丸に、ぎゅっと抱きついた。

「お前は私のものだ。誰にも渡さない」

「・・・・・・」

 そはや丸の顔が微妙に歪む。
 呉羽がそう言っても、その感情は恋なのか。
 最強の妖刀であるそはや丸の主であるのは自分だけ、という意味か。
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