妖(あやかし)狩り・参~恋吹雪~
 呟いたそはや丸は、呉羽の着物を直してやりながら、ふと部屋の隅に転がる烏丸を見た。

「おっと。あいつ、吹っ飛んでしまったな」

「かっ烏丸っ!」

 はた、と呉羽も慌てて起き上がろうとする。
 その呉羽を、ぐい、と押さえつけると、そはや丸は立ち上がって、のびている烏丸に近づいた。

「おい烏丸。生きてるか?」

 首根っこを掴んで持ち上げ、ぶんぶんと揺さぶる。

「おっおい! そんな乱暴に扱うな!」

 わたわたと、呉羽が手を伸ばして叫ぶ。
 何度か揺さぶられて、烏丸はようやく気がついたようだ。
 きゅう、と小さく唸り、目を開けた。

「気がついたか。ほれ」

 ぽい、とそはや丸は、烏丸を呉羽に投げる。
 うわわ、と呉羽は、必死で烏丸を受け止めた。

「お、お姉さん~~。良かったぁ」

 ぼす、と呉羽の腕に落ちてきた烏丸は、呉羽を見るなりおいおいと泣き出す。

「そ、そはや丸がね、今にもお姉さんを殺しちゃいそうで。おいら、もう怖くて怖くて」

「よしよし。お前も怪我してるのに、無理しないでくれよ」

 腕の中で泣きじゃくる烏丸を撫でながら、呉羽は優しく言う。
 そはや丸は再び呉羽の横に座り、その様子を眺めた。
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