妖(あやかし)狩り・参~恋吹雪~
「確かに今すぐどうこうは、しないだろうさ。けど、これぐらいは、したいはずだぜ」

 そう言って、呉羽をぎゅっと抱きしめる。
 そはや丸と呉羽の間で、烏丸が、きゅう、と鳴いた。

「・・・・・・好いた女子とは、触れ合いたいもんだ」

 自分で言いながら、そはや丸は、ああそうか、と心の中で納得した。
 呉羽に触れたいと思ったのは、そういうことだったのだ。
 己が呉羽を想うように、呉羽にも想って欲しいから、そはや丸は人型で呉羽の前に現れたのだ。

「右丸がもし、こういう風に、私を抱いても・・・・・・。左馬頭のように、殴りつけは、しないだろうな・・・・・・」

 大人しくそはや丸に抱かれたまま、呉羽は言う。

「あいつは良い奴だよ。それはわかる。だから、もし同じ事を右丸がしても、嫌・・・・・・ではないかな、と思うんだ」

「接吻してもか」

 ぐ、と肩を掴んだそはや丸に、呉羽は顔をしかめた。
 傷のあるほうだ。

「そはや丸・・・・・・。傷が痛い・・・・・・」

 は、とそはや丸が手を離す。
 そういえば、呉羽は熱があるのだった。

「もういい。寝てろ」

 呉羽を寝かすと、そはや丸は立ち上がる。
 その背中に、呉羽は声をかけた。

「でも、私は右丸よりも、お前のほうが好きだ」

 そはや丸が、ぴたりと止まった。
 しばしそのまま時が流れ、やがて、そはや丸が、前を向いたまま呟いた。

「・・・・・・当たり前だろ。お前は、俺のものなんだから」
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