妖(あやかし)狩り・参~恋吹雪~
「この葬送の地も、こう一面の雪景色になりますと、なかなか風情があるものですわね。あなた様も、この美しい景色に惹かれて、佇んでらしたのかしら?」

 あこめ扇の向こうから、ちらりと流し目をそはや丸に送る。
 そはや丸は先程折った梅の枝で、とん、と肩を叩きながら、女官を見た。
 その姿に、女官は少し頬を染める。

 そのとき。

「そはや丸ーっ。何やってるんだ・・・・・・」

 雪を蹴って、呉羽が走ってきた。
 呉羽のすぐ前を飛んでいた烏丸が、あ、と声を上げ、速度を上げる。

「右丸ぅっ! 右丸じゃないかぁ~っ!」

 嬉しそうに叫んで、烏丸は右丸の胸に突っ込んで行く。

「ああ烏丸。元気そうで良かった」

 右丸も嬉しそうに、烏丸を抱き留める。

「右丸はっ? 大丈夫だったの?」

 ばさばさと右丸の腕の中で羽を動かしながら言う烏丸だったが、いきなり、ごん、と小さな頭を殴られる。
 そはや丸が、持っていた梅の枝で、烏丸の頭を殴ったのだ。

「黙れ。ただの人間の前で喋るんじゃねぇ」

 ぎろりと睨まれ、烏丸は涙目になりながらも、慌てて口をつぐんだ。
 女官の存在を忘れていた。
 事情を知らない人間の前で、いきなり烏が喋るのはまずかろう。

 幸い女官は、何故かぼぅっとした感じで、そはや丸を眺めている。
 烏丸が嬉しさの余り、騒がしく羽を動かしていたので、羽音に紛れて声は聞こえなかったかもしれない。
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