妖(あやかし)狩り・参~恋吹雪~
 文には、切々とそはや丸への想いが綴られている。
 以前の文のような、優雅な内容ではなく、切羽詰まった感じの、切ない胸の内を吐露した内容だ。
 乱れた文字にも、ほたるがただならない状態だということが現れている。

「・・・・・・今一度、お会いしたい、か・・・・・・」

 文を畳み、呉羽は呟いた。
 
「それで、依頼というのは? そはや丸を、女官殿の元へやることか?」

 ちら、と呉羽を見た右丸は、彼女の瞳に、僅かに滲む悲しみを見て取った。
 それに再び、胸が痛む。

「・・・・・・呉羽様は・・・・・・そはや丸殿を、お慕いしていらっしゃるのでしょうか」

 ずっと、そうだと思ってきた。
 が、この前の呉羽の態度で、もしかすると、そはや丸の一方的な想いで、呉羽自身は彼のことを何とも想っていないのかもしれない、と思い始めていた。
 そういう希望が見えたため、この前右丸は、思い切って告白したのだ。

 だがやはり、呉羽はそはや丸を好いている、という疑いは晴れない。
 今の呉羽の表情で、その思いは一層強くなった。

 右丸の問いに、呉羽は黙ったまま、彼を見つめている。

「慕うって何だ?」

 真っ直ぐに右丸を見て言った呉羽の言葉は、右丸には理解しがたいものだった。
 ぽかんと呉羽を見る。
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