妖(あやかし)狩り・参~恋吹雪~
「くっだらねぇ」

 一通り文を読み、そはや丸は、吐き捨てつつ文をばさりと投げ出した。
 そのあまりの態度に、右丸の顔色が変わる。

「なっ何てことを! あなたを想うほたる様の心を、くだらないと仰るんですか!」

「ああ。たかが接吻一つでここまで壊れるたぁ、どんだけ男に慣れてないんだか。呉羽だって、そんな脆くないぜ」

 なぁ? と呉羽の肩に手を回し、そはや丸は顔を近づける。
 頬に触れるほど近づいたそはや丸の顔を、むぎゅ、と押し返し、呉羽は右丸に目を向けた。

「私たちのは、接吻というよりも、気のやり取りなんだ。口は一番簡単な身体への入り口だから、接吻することによって、相手の気を貰ったり、逆に入れたりするんだよ」

「え・・・・・・」

「だからな、もし烏丸をお前から出すときに、私もついて行ってたら、まず私がそはや丸に、口移しで妖気を貰って、その後お前から、同じように口移しで烏丸を引き出してたってことだよ。この場合の私が、今回は女官殿だったってこと」

 呉羽の説明に、右丸は黙ったまま空(くう)を見つめた。
 言われたことを頭の中で反芻し、懸命に理解しようと努める。
 幸いにというか、言われたことが凡人の右丸には難しすぎて、『何故そはや丸から妖気を貰うのか』というところまでは、考えが及ばない。
 そはや丸は、何故か機嫌悪そうに横を向いた。

「・・・・・・つまり、そはや丸殿は、ほたる様を好いていたわけではない・・・・・・と」

「それは・・・・・・」

 そこまでは、よくわからない。
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