妖(あやかし)狩り・参~恋吹雪~
 それに、あのように乱れた字の文を見た後では、そうだとしても、そのまま言って良いものか・・・・・・と躊躇した呉羽だったが、それにおっ被せるように、そはや丸が口を開く。

「当たり前だろ。この俺様が、あんな女を本気で慕うと思うのか」

 ふん、とそっぽを向いたまま言うそはや丸に、何故か呉羽は、ほっとした。
 が、右丸はまた、拳を握りしめる。

「あなたには、相手を思いやるという心がないのか・・・・・・!」

 絞り出すように言う。
 いつもの右丸からは、考えられない態度だ。

 いつもどこか臆病で、従順で優しい右丸が、今は怒りで震えている。
 呉羽の膝の上で、烏丸がはらはらと、そんな右丸を見つめた。

「ほたる様は、あなたを想うあまり食事も喉を通らず、夜もうなされておいでなのに! 日々憔悴していって、まるで何かに取り憑かれているように、ひたすらあなたを想い続けているのを見かねて、文を書くよう勧めたのです。あのままでは、生き霊になりかねない」

「知ったことかよ。どうでもいい女がどうなろうと、痛くも痒くもないね」

 相変わらず、そはや丸は右丸の怒りなど意に介さない。
 所詮妖とヒトは、思考の回路が違うのだ。

 ヒトと同じように考えるものではないのだが、そもそも右丸は、そはや丸をヒトだと思っている。
 ヒトとしてはあり得ない態度に、右丸は絶句する。
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