妖(あやかし)狩り・参~恋吹雪~
「・・・・・・あなたという人は・・・・・・!」

 怒りの籠もる瞳でそはや丸を睨み付け、右丸は座を蹴って立ち上がった。

「もう頼みません」

 そう言うや、大股で出て行く。

「待て、右丸」

「放っとけよ」

 腰を浮かす呉羽に、そはや丸が言うが、呉羽は立ち上がると右丸を追った。
 屋敷を出たところで追いつく。

「まだ依頼を聞いてない。お前は、そはや丸ではなく、私に依頼を持ってきたな。何も単にそはや丸を女官殿のところに連れて行くだけが目的ではあるまい?」

 背中にかけた呉羽の言葉に、右丸は立ち止まった。
 呉羽は重ねて右丸に言う。

「あの文字を見れば、女官殿が普通でないということぐらいわかる。術師に頼らねばならんほどの状態なんじゃないのか?」

 右丸は前を向いたまま、両拳を握りしめた。
 ややあってから、小さく頷く。
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