妖(あやかし)狩り・参~恋吹雪~
第九章
ほたるの元に着いたのは、とっぷりと日が暮れてからだった。
いや、正確には夕刻には着いていたのだが、貴族の屋敷というのは何かとうるさい。
門前や簀の子で散々待ち時間を食わされ、このような時刻になってやっと、ほたるの局に入ったのだ。
ほたるは力なく、脇息に寄りかかっていた。
呉羽との間には几帳が立てられ、灯りも細くされている上に、ほたる自身があこめ扇で顔を隠している。
そのため、ほたるの状態がどのようなものかはわからない。
「ほたる様。呉羽様が来てくださいましたよ。ご気分はどうです?」
右丸が声をかけるが、几帳の向こうの影は動かない。
呉羽は几帳越しに、じっとほたるを見た。
今のところ、呉羽に感じられる妖気は、ないように思うのだが。
---確かに何か、塞ぎ込んではいるようだけど。単なる恋煩いじゃないのか? だったら私には、どうすることもできないんだが・・・・・・---
ぎゅ、と傍らに置いたそはや丸を握る。
同じく局に控えていた、ほたるの同僚という女官が、几帳ににじり寄った。
「ほたるさん。一度術師様に、ちゃんと診て貰いましょうよ。ほたるさんも苦しいでしょう?」
局の中には、ほたるに呉羽と右丸、それとこの女官しかいない。
通常ほたるは、何人かの女官仲間と同室で生活しているが、今はほたるは隔離されているようだ。
この局は、母屋から最も離れた場所にある。
いや、正確には夕刻には着いていたのだが、貴族の屋敷というのは何かとうるさい。
門前や簀の子で散々待ち時間を食わされ、このような時刻になってやっと、ほたるの局に入ったのだ。
ほたるは力なく、脇息に寄りかかっていた。
呉羽との間には几帳が立てられ、灯りも細くされている上に、ほたる自身があこめ扇で顔を隠している。
そのため、ほたるの状態がどのようなものかはわからない。
「ほたる様。呉羽様が来てくださいましたよ。ご気分はどうです?」
右丸が声をかけるが、几帳の向こうの影は動かない。
呉羽は几帳越しに、じっとほたるを見た。
今のところ、呉羽に感じられる妖気は、ないように思うのだが。
---確かに何か、塞ぎ込んではいるようだけど。単なる恋煩いじゃないのか? だったら私には、どうすることもできないんだが・・・・・・---
ぎゅ、と傍らに置いたそはや丸を握る。
同じく局に控えていた、ほたるの同僚という女官が、几帳ににじり寄った。
「ほたるさん。一度術師様に、ちゃんと診て貰いましょうよ。ほたるさんも苦しいでしょう?」
局の中には、ほたるに呉羽と右丸、それとこの女官しかいない。
通常ほたるは、何人かの女官仲間と同室で生活しているが、今はほたるは隔離されているようだ。
この局は、母屋から最も離れた場所にある。