妖(あやかし)狩り・参~恋吹雪~
 しかし、呉羽が近づいた途端、ほたるはいきなり、前のめりにぶつかってきた。

「・・・・・・!!」

 局内の時が止まる。
 もたれ合った呉羽とほたるの間に、ぽたりと血が落ちた。

『呉羽っ!!』

 そはや丸が叫び、ぶわ、と物凄い妖気が局を満たした。

「呉羽! おい!」

 聞き慣れた声に右丸が顔を上げると、いつの間にか、呉羽の背後にそはや丸が立っていた。
 そはや丸は血相を変えて、よろめく呉羽を後ろから支えた。
 ほたるから離れた呉羽の胸元が、赤く染まっている。

「おい! 刺されたのか・・・・・・」

 焦るそはや丸に、呉羽は見開いた目を少し落とすと、小さく首を振った。
 そして、目の前のほたるを見る。

「女官殿・・・・・・!」

 血は、ほたるの手を真っ赤に染めていた。
 右手で握った懐剣が、左の手の平を刺し貫いている。
 右手と左手が、別の意思を持っているようだ。

「女官殿! 何故このような・・・・・・」

 状況を把握し、呉羽はほたるに駆け寄った。
 その呉羽を、ほたるは拒むように後ずさり、身体を縛った結界のせいで、床に倒れ込んだ。
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