妖(あやかし)狩り・参~恋吹雪~
「いったたたた」

 身体を丸めて呻く呉羽を抱えたまま、そはや丸は簀の子に出た。
 すぐに木の枝に留まっていた烏丸が飛び降りてくる。

「お、お姉さん~、大丈夫?」

 思わず叫んだ烏丸の小さな頭を、そはや丸が、がしっと掴む。

「不用意に喋るなと言ってるだろうが。このまま頭潰すぞ」

 ぎろ、と睨まれ、烏丸は涙目になって震え上がる。
 呉羽は手を伸ばして、烏丸を抱き寄せた。

「大丈夫だよ。そうだ、あの部屋に倒れてる女官、ほたるとか言ったか。妙な気は、もうないかな?」

 呉羽に言われ、烏丸は伸び上がって局の中を覗き込む。
 その烏丸を、そはや丸が再び片手で掴んだ。

「横着するな。ちゃんと見ろ」

 言うなり、烏丸をほたるのほうへ投げ飛ばす。

「きゃんっ」

 叫び声を上げて、烏丸はほたるの上に、ぼすん、と落ちた。
 傍にいた右丸が、驚いて抱き上げる。

「かっ烏丸っ。あのなぁ、まだ妖を祓えてなかったらどうするんだ。烏丸が危ないだろっ」

 呉羽も驚いて、飛んでいった烏丸を目で追い、そはや丸を睨む。
 が、そはや丸は不満そうに、腕の中の呉羽に視線を落とした。

「お前は俺様が、あんなちゃちい邪気も吸い尽くせないと思うのか」
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